肉牛専業の規模拡大を 🐃肉牛
新規参入によって、やりたかった肉牛専業の規模拡大を目指す
[Kさん(37歳)、平成24年4月就農、ハ雲町]
(取材:令和元年9月24日 O記 協力:八雲町)
地域の概要
八雲町は渡島半島の北部にあり、平成17年に旧八雲町と旧熊石町が合併し、日本で唯一、太平洋と日本海を持つ町となりました。渡島管内最大の面積をもち、農業・漁業ともに恵まれた立地となっています。八雲地区の農業は、『ヤマセ』や『海霧』などの気象条件や火山性土壌であることから冷涼な気候を好む酪農を基幹とし、熊石地区の農業は、温暖な気候のもと耕地面積が少ないながらも水田・畑作等の複合経営を基幹としています。
八雲町の新規就農支援は、北渡島指導農業士・農業士会と普及センター、JA、農業委員会、町農林課の5者で組織する「八雲町農業担い手育成センター」が中心となり、農業体験・研修の受け入れから就農後の子育てや住居、買い物といった衣食住に関わる生活全般、作物の選択や資材の購入、補助事業や資金の活用に至るまで、親身になってアドバイスしています。
動機から就農まで
Kさんは弘前大学で土木工学を、奥さんは同じ大学でバイオテクノロジーを専攻する1年先輩で、卒業後は八雲町の実家の農業(種子馬鈴薯を主体とし黒毛和種と交雑種を少頭数飼育)に夫婦で6年間参画しました。その間、牛の仕事が楽しくなり、青年就農給付金(現在の農業次世代人材投資資金(開始型))の利用による肉牛専業での新規就農の道を模索しました。
すでに離農した農家から放牧地と育成舎を借り、実家から黒毛和種3頭と交雑種30頭を買い取り、そこへ新規入植することを決断しました。就農にあたっては、八雲町役場などから青年等就農資金、農業次世代人材投資資金(開始型)や経営体育成支援事業など各種事業の活用をアドバイスしていただき、新規に肉牛の経営を展開することができました。
就農してから
青年等就農資金は主に黒毛和種の導入にあて、H25に鹿児島県から黒毛和種繁殖素牛13頭を800万円で導入し、その翌年からも年10頭程度を市場から導入しました。個体価格が高騰する前に血統の良い牛を揃えることが出来たことで、その後の経営を支える繁殖牛の基盤が出来上がりました。現在は入植7年目を迎え、繁殖牛90頭、育成牛50頭、年間販売頭数60頭まで拡大し、受精卵の販売も手掛けるようになりました。
黒毛和種繁殖経営の場合は、繁殖素牛を導入し育成~授精~妊娠~分娩~子牛育成~素牛販売と、経費が出ていく一方で、収入を得るまでに2年近くが掛かります。このため、Kさんは、酪農ヘルパーを就農後4年間(就農前3年間も実施)続けることで現金収入を稼ぐことができました。
また、人・農地プランの規模拡大加算2万円/10aの制度も利用できたので8haで160万円となりました。
これら様々な資金や制度を活用しながら、規模拡大を図ることができました。現在、繁殖牛200頭飼育の目標を達成するために、繁殖牛舎4棟を建設しています。
昨年1月から農協の役員に推薦され、また経営規模の拡大に向けて昨年2月から従業員を一人雇用するなど、将来を見据えた肉牛経営の確立に余念がありません。
経営概要
・労働力:Kさん、Kさんの奥さん(経理や個体情報管理)、従業員1名
・経営面積:30ha(所有地10ha、借地20ha)
・哺育舎1棟、育成舎3棟、繁殖牛舎1棟、倉庫2棟、堆肥舎2棟、
繁殖牛舎(建設中)4棟、
・トラクター5台、堆肥攪拌機1台、ロールカッター1台、牧草収穫機一式
・販売方法は農協経由で市場出荷
就農支援制度の活用
・青年等就農資金、農業次世代人材投資資金(開始型)、経営体育成支援事業
経営の特徴
・各種制度や事業を利用し、費用対効果のある投資を積極的に行っている。
・規模拡大により雇用を創出している。
・もみ殻を敷料に使い、堆肥撹拌機で発酵させ、戻し堆肥として敷料に再利用している。
・哺育ロボットの導入など省力化を図っている。
・日々充実し、仕事の面で自分のやりたいようにやれている。
・償還額が増えるこれからが正念場。
経営の目標
・目標生産量:40才までに200頭の繁殖牛
・目標生産額:素牛販売だけで1憶円
・この計画が達成された以降は肥育を考える
後輩へのアドバイス
・具体的な目標を持ち、目標を実現するためにはどうしたらいいか、情報を集め考え行動すること。
・生き物相手なので色々な疾病や事故が発生するが、課題を克服しスパイラルアップすること。
写真
現在建設中の繁殖牛舎(1棟25頭で100頭を飼育予定)