初期投資をおさえ安定経営を 🍓いちご
農業者のイチゴ栽培を居抜き継承で引継ぎ、初期投資を軽減し、安定経営を確立~地域の農業者と関係機関の支援を受け、地域に溶け込み気候に左右されながら、夫婦で美味しい「豊浦イチゴ」を生産~
[Tさん(40歳) 平成26年7月就農 豊浦町]
(取材:令和元年10月24日SH記 協力:豊浦町地域担い手育成センター)
地域の概要
豊浦町は胆振管内の西端に位置し、北海道内では夏は涼しく冬は比較的温暖。噴火湾に面し、対岸に駒ヶ岳、北に羊蹄山を眺望する風景と、背後を田園と緑深い森に囲まれ豊かな自然環境に恵まれています。
豊浦町は、人口約4,000人の町で、噴火湾に面し、地勢も大半が丘陵地帯であることから、農業と水産業が基幹産業です。
農業は、全道的に知られたイチゴの産地であり、ジャガイモや水稲・アサツキ(生産量全道一)も栽培されている。また、乳牛・肉牛・養豚といった畜産にも力を入れており、特に豚肉は全道一の生産量を誇っています。
新規就農対策では、就農希望者を「地域おこし協力隊(農業支援員)」として受け入れて、特産のイチゴの産地の維持発展に貢献しています。
平成30年には、町内の小学校跡を活用して露地野菜50a、イチゴ栽培ハウス6棟(100坪ハウス)、農機具庫、旧校舎を改修しイチゴ選果施設、農業体験者滞在施設等の「豊浦町地場産業連携拠点施設」を整備した。
動機から就農まで
北海道出身のTさんは、20代の頃から農業に関心があり、富良野市の農業ヘルパーを半年間経験し、札幌市に転居後さっぽろ農学校を受講し、自分で農業をやりたいという思いが強くなった。トラクターの研修で知り合った豊浦町の新規就農の先輩から豊浦町のことを聞き、豊浦町を訪問。そこでイチゴ栽培をしていた居抜き物件の情報を得た。
平成25年に農業研修を開始し、研修先の農家から、技術面と農家の心構えについて教わった。平成26年に居抜き物件の設備を生かし、イチゴ農家として新規就農。イチゴの栽培ハウス等の施設を引き継ぎ、初期投資を抑えることが出来た。
経営規模
経営面積:1.0ha(所有地)
栽培作目 イチゴ(高設栽培) 栽培ハウス4棟
(品種 すずあかね3棟、けんたろう1棟)
農業機械・施設:ビニールハウス4棟
労働力: 本人、夫
販売先: JA80%、道の駅等20%
就農支援制度の活用
・就農時に豊浦町の就農支援金を活用。(上限250万円)
・青年等就農資金、農業次世代人材投資資金の活用。
後輩へのアドバイス
まず、各種支援制度に頼るのは危険。理由は制度や体制が変化すると変わることがあるから。
今後の経営の方向性
・経営の安定化 (天候によって収量が左右されるので、栽培技術の向上を目指す。)
・規模拡大は考えていない。(夫婦で管理できるハウス棟数は4棟が限界)
雑感
Tさんは、富良野市の農業ヘルパー、札幌市のさっぽろ農学校で農業を学び、人脈を広げたことが就農に繋がった。就農地情報を知人から教えられ、豊浦町のイチゴ栽培の継承物件を譲り受け、初期投資を軽減し就農できたことは資金償還の軽減にもつながっている。
ただし、近年の天候不順により収量が不安定になり苦労しているようで、安定した収量確保のための技術向上に向けて努力している。労力的に夫婦で管理できる限界規模を栽培しているので、無理に規模拡大をせず、単位収量と品質の向上により安定経営の確立を模索している点は評価できる。
写真
左上①:豊浦町イチゴ、右上②:T農場のイチゴ栽培ハウス
左下③:T農場のイチゴ高設栽培、右下④:豊浦町地場産業連携拠点施設