頑張ってます!新規就農者

江別市

農業と福祉の連携をさらに  🥒野菜

江別市で尊敬する指導農家3戸に出逢ました
~きゅうりがとれて収穫の喜びを感じる時に、就農して良かったと思う~

[Tさん(40歳)、平成27年4月就農、江別市]
(取材:令和2年9月29日 TC記、協力:(公財)道央農業振興公社 )

地域の紹介

道央地域は【小麦のまち 江別市】【空港のまち千歳市】
【花のまち恵庭市】【ボールパーク構想のまち北広島市】
交通の便が良く、生活、教育しやすい環境
・大消費地である札幌市に隣接し、新千歳空港や苫小牧港が近く、物流にも適した地域です。
・総合病院、小児科、産婦人科、歯科医院等があり、時間外は当番制で対応しているので安心です。
・幼稚園、保育所から高校まで市内で通えるほか、各市に大学、専門学校があります。
・コンビニ、スーパーが多数あり、図書館、多目的運動場、キャンプ場、温泉もあります。


道央農業の概要
・JA道央は、平成13年に5農協が合併して誕生
(千歳市、恵庭市、北広島市、江別市、野幌)
・耕地面積  16,400ha
・正組合員数 1,720人
・品目の中では、野菜類の販売額が多い
・全道の中で、ブロッコリー、キャベツ、レタス、はくさいの作付面積が多い

東日本大震災から就農するまでの ポップ・ステップ・ジャンプ!

 東日本大地震の被災をきっかけに、人の命と暮らしに直結する、大切でなくてはならない仕事に「やりがい」を見出したいと思うようになりました。そんな自分の想いを北海道で実現させようと、祖父が千歳市にいたことを縁に、(公財)道央農業振興公社で就農研修を受けることになりました。
 
【ホップ】 
 平成24年4月から1年間は、(公財)道央農業振興公社のトレーニングほ場で研修し、25年4月には、「花き」栽培をしたかったため、1人目の指導者である花き農家に研修に入りました。
 しかし、1年目の研修が終る頃になり、「本当に独り立ちができるのか?」という疑問がTさんを襲います。当時は手伝ってくれる人もいなく、一人では作業が厳しく、先の(経営の)安定感も読めないことから、考え直した方が良いのでは?という思いが沸き上がってきたのです。

【ステップ】
 研修指導農家には、花き以外の作物もあったため、2年目には花きを諦めて、ブロッコリーやにんにくなどの野菜の栽培研修に切り替えました。通算3年間の研修終了後には、現在の就農地にある農家の跡を引き継ぐ準備が整っていました。

【ジャンプ】
 研修終了が目前に迫った秋、同市内できゅうりを栽培する“師匠”との出会いにより、Tさんのめざす作物・農業にようやく焦点が絞られました。とはいっても、翌春からは自分の営農がスタートします。
 経営開始に当たり、地域の農業者がきゅうり用2棟のビニールハウス建設などを手伝ってくれました。きゅうりの師匠には、Tさんのハウスに来てもらい、は種から定植、整枝など全ての栽培技術の指導を受けました。きゅうりの収穫最盛期には、電話で指導を受けることもあったと言います。
 更にTさんが尊敬する師の一人でもある、「農地を引き継ぐ農家」からも、きゅうり栽培以外の技術を、営農しながら教えて貰いながらの就農1年目でした。 

波乱万丈ながらも暖かい支援を得て、確かな足跡がくっきりと残る平成27年となりました。

就農地を決めたポイント

地域に根ざした作物である、ブロッコリーやにんにくがあったことや、就農地の確保の面でも地域のつながりが強いところが決め手。
就農地はなかなか見つかりませんでしたが、JAや道央農業振興公社が、消費地に近く単身者も受入してくれた現在の就農地を、探してくれました。

経営概要

経営形態:野菜専業農家
経営内容:
 施設野菜 きゅうり6a(ハウス2棟)、グリーンアスパラガス6a(ハウス2棟)、スイートコーン6a(ハウス2棟)
 露地野菜 ブロッコリー1ha (10aずつ10回に分けて定植)、スイートコーン70a、えだまめ50a、にんにく等

経営面積:所有地 田87a、畑75a、  借地 田156a 計318a

施設・建物:ビニールハウス 100坪6棟、農機具庫・選果場などを兼務する倉庫40坪1棟

機    械:トラクター40ps1台・他小型中古2台、ブームスプレイヤー1台、軽トラック、ブロードキャスター1台、フォークリフト1台  

住   宅:ほ場から600m程にある民間アパート

労 働 力: 本人、家族(父母)2人、JAパート2人、農福連携で8人

労働力確保の工夫:就農後には、労働力確保に苦労したと語るTさんは・・・
①作付けが本格的になる5月~11月は、青森に住んでいるご両親(60歳代)が、江別市に季節移住し農作業に参加。
②令和1年から、ブロッコリーの収穫などにJA道央の派遣パートを利用。
③道央農業振興公社にコーディネートをして貰い、市内の福祉事務所2ヶ所と契約を結んでいる。週2回、1回に4~5名ずつ利用者に来てもらい、除草・植え付け・収穫作業などを行ってもらっている

就農支援制度の活用

農業次世代人材投資資金(準備型)
新規就農研修手当     【(公財)道央農業振興公社】
体制強化資金・家賃助成 【公財)北海道農業公社事業】
農業次世代人材投資資金(経営開始型)
青年等就農資金
平成30年台風災害復旧支援 【江別市】

農業をやりたいと思っている、後輩へのメッセージ

思っている以上に新規就農する事は大変。しかし、思い切ってチャレンジして欲しい。
キツイ、きびしい仕事ではあるが、続けていく事で必ず難局を抜け出せるようになる。
新規就農をしたいのであれば、サポートしてくれる機関もあるので頼りながら、思い切って決断をして頂きたい。

経営の目標

労働力の面から規模拡大は考えていない。今の露地野菜品目で、4年輪作ができる農地があれば良いと考えている。
施設野菜に力を入れ、野菜の品質及び収量を上げる事で経営内容の充実を図りたい。
(平成30年生産実績~きゅうり14,600kg/10a、ブロッコリー8,580玉/10a など)
農業と福祉の連携をさらに進めていきたい。働いて貰う側に向き・不向きの作業があり、それを理解していく事は農業者として、大事だと思う。

雑感

 就農して6年目の収穫期を迎えたTさん。「就農して良かった点は?」
作物がとれて収穫の喜びを感じる時に、就農して良かったとしみじみと思う。
 農業次世代人材投資資金(経営開始型)の交付が終了して1年目を迎えたTさんに、聞いてみました。「思った方向に進んでいますか?」
 「その分を作物の収入で補えるのかを頭に入れて、作付けに入った。1年目には1年目の悩みがあるように、6年目にも悩みが出てくる。10年経てば10年の悩みが出るだろう。目標に近づきながら、また悩んでいくこの状態で良いのかと思う」

 上江別のほ場に伺った日はあいにくの曇天・小雨が降る日でしたが、Tさんは、実を取った後のスイートコーンの茎葉をトラクターで土に混ぜ込んでいました。
 トレードマーク(?)の、白いタオルを頭に巻いたまま取材に応じてくれたTさんの笑顔には、地域の仲間からの信頼も得られ、ここで農業経営者として生きていくという自信に満ち溢れていました。