頑張ってます!新規就農者

豊富町

地元で新規就農いいこと一杯   🐮酪農

生まれも育ちも豊富町のAさんが地元で新規就農しました。

[Aさん(33歳)、配偶者(30歳)、子供3人 令和2年9月就農、豊富町]
(取材:令和3年10月29日 O記 協力:豊富町役場)

地域の概要

 豊富町は稚内市の南に位置し、西は日本海に面した酪農の町です。
雄大なサロベツ原野を望み、1万3千ヘクタールの牧草地を基盤とした放牧型酪農や大規模酪農などを展開しています。また、町内には豊富牛乳公社があり、地元で生産された牛乳を「サロベツ牛乳」として道内各地で販売しています。
 豊富町の新規就農支援は充実しており、酪農家と各関係機関が連携を密にし、移譲希望農家を把握したうえで継承希望者を受け入れ、指導農業士の牧場や酪農ヘルパーなどで2年間研修を重ね就農しています。

動機から就農まで

 豊富町に生まれ育ったAさんは、削蹄師として15年間 地域の酪農家と接してきました。「平成27年に長男が産まれ、妻や子供のことを考えたとき、自営業の方が家族との時間がたくさん作れると考え、酪農家を目指そうと思い始めました。」と語るAさん、家族を大切にしたい気持ちが伝わってきます。
 平成30年、新規就農したいことを北宗谷農協に相談し、移譲希望農家を紹介されたそうです。先代の親方はとても人柄がよく、畜舎や草地もよく整備された放牧酪農の農場だったので、この農場で働けることに喜びを感じ、自ずと研修にも身が入りました。
 Aさんの研修は、平成31年1月から令和2年9月まで酪農ヘルパーとして働き、昼間は移譲農家の牧場に行って、親方に採草地と放牧地の管理作業などを教わりました。
 酪農ヘルパーでは、飼養環境の異なる様々な農場での経験が役に立ったそうで、「とくにブリーダーの農場では、牛を大切にしていること、牛舎や乳牛がきれいなこと、管理が行き届いていることに驚いた。」と衝撃的だったそうです。
 移譲農家での研修は、トラクターや作業機の操作、施肥や収穫などの作業、放牧の方法など、親方の培ってきた技術を惜しみなく教えていただきました。
 また、町内には酪農家の同級生が多いことから、分からないことがあったら気軽に聞けるなど、とても頼りになりました。
 妻の研修先は、町内で酪農を営んでいる叔父(妻の母の実家)の農場で、平成30年12月から令和2年9月まで朝晩の搾乳や管理作業を中心に勉強しました。
 「子供が小さい頃は、両親が面倒を見てくれるなど協力して貰え、親族や友人が町内に居てくれることは心強く、地元出身者が地元で新規就農する利点は沢山ありますね。」と話してくれました。

就農してから

 「最初の1年間は、要領が悪く寝る暇もなく働いた。とくに就農後、数か月後に分娩が集中した時期があり、この時ばかりは体力、精神力ともにギリギリのところで作業していた。今やっと落ち着いてきました。」とAさんは振り返る。そんな忙しい中でも、酪農ヘルパーの時に学んだブリーダーのきれいな農場に憧れ、「きれいな作業を心掛けるようにしている。」という。
 農場を訪問して「牛がきれい、臭わない。」ことに驚き、聞いてみると、「尻尾を洗うのが日課になっている。」そうで、ブリーダーで勉強したことを忠実に実践している様子がうかがえました。
 また、牛舎に長く居たいとの思いから、牛舎内に手作りの事務室を友達にも手伝ってもらい作りました。元々は物置に使っていたスペースを改造。壁と天井に化粧板、床にフロアマットを貼り、照明を変え、机と応接セット、壁掛けテレビと時計を備え付けました。応接セットのテーブルには壁と同じ化粧板でコーディネートするなど拘っています。「黒と茶を基調とした男性にとって居心地の良い場所にしたかった。」とのこと。机には酪農の雑誌や乳検成績が並んでいます。
 就農してから苦戦したのは、経営者となるための勉強が足りなかったこと。「例えば、牛を購入するにも70万円とか80万円の費用、トラクターになるととんでもない金額になるが、雇われて生活していた頃は大きなお金を動かしたことが無いので、金額の大きさに驚いてしまう。今は徐々に慣れてきた。」そうです。
 また、「勉強不足でも、役場、JA、普及センター等の関係機関が手厚くサポートしてくれた。就農後も、何度も担当者たちが足を運んでくれ、自分がJAを訪れても親身に対応してくれている。」と感謝の言葉が続きます。
 新規就農して良かったことは、「自分のやりたい経営ができること。家族との時間をとりやすいこと。地域の人達とつながりを持てること。」と語ってくれました。

経営概要

・労働力:2人                          
・経営面積:62haうち放牧地5.8ha
・経産牛:44頭、育成牛20頭
・出荷乳量:320t
・牛舎、育成舎、堆肥舎、倉庫3棟、トラクター4台、収獲作業機一式

就農支援制度の活用

・青年等就農資金
・公社営農場リース事業(農地保有合理化事業含む)
・豊富町新規就農奨励金
・JA北宗谷 経営開始奨励金

今後の経営の方向性

・農場リース事業完了後は、規模拡大したい。
・目標は120頭FS牛舎を建設し、搾乳ロボットを導入すること。

就農前に習得した方が良いと思う事

・どんな牛にも対応できる搾乳技術

後輩へのアドバイス

・常日頃、勉強を怠らないこと。疑問があれば、関係機関に指導を仰ぐこと。