野菜 男性
<オランダ農業研修報告書>
1)研修期間
2019年5月中旬〜2020年3月中旬(9ヶ月)
2)配属農場について
私はオランダ南西部、ゼーラント州に位置するGebr. van Duijn(ゲブル・ファンダイン)というナス農場で研修をしました。
その会社はオランダ語ではVan duijnブラザーズという意味で、3人の兄弟がそれぞれ3つの農場を担当しています。その他、家族ではない2つの農場と計5つの農場で協同組合を組織してPurple Prideというブランドで販売しています。
Van Duijn家は合計で約25haのグラスハウスでナスを栽培しています。ナスの販売先として1番多いのはドイツです。その他にもオランダ国内、EU圏内、イギリス、アメリカ、そして日本にも少量輸出しているそうです。
農場の労働者は主にポーランド人とルーマニア人で私のいたOosterlandという支部では6haの温室を最大40名で作業を行っています。農場では箱詰め作業を行っているため、箱詰めではなくコンテナで出荷をするトマトなど他の作物の農場と比較して多くの労働者が必要となります。
農場の形態としてOosterlandでみると、まず三兄弟の一人のオーナーがいます。そのオーナーの仕事のメインは経営で、通常の農作業をすることはありません。その他に一人のオランダ人のマネジャーが農場に常駐して作業の指示や温室の環境の管理を行っています。またさらにその下に社員が4名程度いて、それぞれが収穫、剪定、箱詰め作業を担当し、作業をしながら労働者に対して指示や指導を行います。
3)研修の内容
通常のスケジュールは他の労働者と同じように作業を行います。始業時間は朝6時からですが、日の出の時間によって変化するため、10月以降は出勤時間が午前8時頃まで遅くなります。またとても忙しい日や、予想最高気温が35℃を越すような日には朝5時半から仕事が始まって早めに切り上げます。労働時間は基本は8時間なので、夏は16時頃に帰宅できます。給料として週150ユーロが振り込まれます。週や季節によって労働時間は異なりますが、週の労働時間は平均40時間となります。
私は約9ヶ月間同じ農場にいたので、ほぼ全ての作業を経験することができました。日常の収穫や剪定、箱詰めの他にも収穫後の片付けや清掃、次シーズンに向けての準備まで行いました。また他の研修生と共に会社からプロジェクトを与えられ、害虫のトラップを温室全体に配置して、定期的に捕獲数を計測することで、どの時期にどこの区画で害虫が発生するかなどを考えて農場のオーナーに発表も行いました。
研修が始ってから10月頃まではオーナーが所有するトレーラーハウスでポルトガル人研修生と生活していました。食事は自炊で、そこでその研修生と同居できたので、ヨーロッパでの暮らしや英語を日常的に学ぶことができました。
農場では人事担当の方が研修生の担当もしており、その方とは二週間に1度程度会って、研修の状況などを話していました。また農場のオーナーやボスとは日常的な会話もしており、多くのオランダ人は英語を話せるので、オランダ語を使う場面は挨拶以外ほとんどありませんでした。
4)研修の成果
約1年間通して農場で研修できたことで多くのことを学びました。例えば農場は作物の生産を専門に行っているということです。そのため育苗の設備は無く、苗は種苗会社からオーダーメイドの接ぎ木苗を購入しています。またオランダには温室の清掃業者がいて、農場は片付けの準備をするだけで、ツルやロックウールの搬出、処分は業者が行います。それらに必要な施設や機械を用意するより外注する方がコスト削減になるためだと思われます。
収穫したナスを選果場まで自動で運ぶカート
さらに農場では様々なデータが取られて利用されています。例えば労働者は休憩や作業が変わるたびに機械に作業内容を記録します。またそれぞれの作業には番号が付けられており、その種類は150以上にもなります。それらのデータを利用することで、誰がその作業をしたか、その作業にいくらの人件費を費やしたかなどがひと目でわかります。
このような大量のデータは収集しコストが明らかになることで次々と早い段階で新しい投資につながるとオーナーも話していました。
5)これから研修をする方へ
まず必要なのはコミュニケーションです。実践的な英語は現地で学ぶことはできますが英単語、特に農業に使われる現象やモノ、動植物などの専門的な言葉を知っていればより理解が深まります。また外国人労働者の中には英語を話せない人もいます。その人たちの言葉を覚えようとするとそれがコミュニケーションになって距離が縮まるのでオススメです。また初対面の方とは名前を覚えて呼ぶことが特に大切です。
6)最後に
研修当初はなかなか自分の意見を伝えることができませんでしたが、研修が進むにつれて自分の考えをもって伝えられるようになりました。また研修外でも普段の生活では、通常の旅行では味わえない経験ができました。最初は早く日本に戻りたいという思いもありましたが、人とコミュニケーションが増えるにつれて現地に馴染むことができました。
私はこの研修を通して大きく成長できたと感じました。オランダで研修ができて本当に良かったです。研修の準備から研修中まで支えてくださった北海道農業公社の方々に心より感謝申し上げます。
夏のスイス旅行